不倫は文化

名優 石田純一の至言。

確かに不倫という概念は、文化を持つ人間にしか成立しないんだよなぁと。

昨日、一人で見てきました。

  1. 始まる前の予告について

上映開始まで10分くらい流れる予告編。アニメ映画ということもあり、予告編も「攻殻機動隊」「宇宙戦艦ヤマト」「中二病でも恋がしたい」「銀魂」など、アニメのものが多いのですが、そこで周囲のカップルらしき男女から聞こえてくるオタクトークの数々。キャラ設定がどうだの声優がどうだのと・・・。改めてオタクだからモテなくてもしょうがないという言い訳を挫いてくれる状況に出会いました。

そもそもこれって一人で見るものじゃなかったか?それこそ中二病をこじらせた長期患者たちをあてこんだ商法と思ってましたが、やっぱり映画はカップルで観ないとね!ってことか・・・。

  1. 同時上映(?)された「だれかのまなざし」について

予告と映画泥棒*1が終わり、本編に突入!と思いきや、スクリーンに登場した「PROUD」の文字。??と思っていると本編とは異なるストーリーが始まるのです。

【以下ネタバレ注意】

内容は、社会人になりたての女性とその父、そして猫の物語らしい。ちなみに母は海外赴任が多いという設定。

女性(平野文ラムちゃんの人)の語りナレーションで筋が語られていく形式で、娘は仕事で上司に怒られ、毎日疲れちゃってるというところから始まります。そこに初老の父親から一本の未来電話*2が。「メシでもどう?」的な問いかけがあるもお疲れの娘はそれを断り、よくある「親子の薄れつつある関係」が描かれていきます。

実はこのお父さんも同じように女上司から怒られて、仕事が大変なご様子。新海作品の現代劇では、仕事がうまくいかないという条件が必須なのか?そんな薄れつつあった関係がひとつの出来事をきっかけに進展するのであります*3

それは飼っていた猫の死。この猫は娘が小さいときから飼っていた猫で、父からの知らせで娘は実家へと帰り、そこで父娘の会話が再会し、「幸せは続いていくんだよ」という結論に至るのであります。ちなみに冒頭からの差レーションは母親視点と思いきや、実はこの死んだ猫視点であったということが最後に判明します。


まあストーリーは正直ありきたりな内容です。ただ一つ特徴的なのは、父親が暮らす実家が結構眺めのよさそうなマンションであるということ。

「しがない父親」を演出するのなら、それこそ公団住宅みたいな狭いマンションのほうがいいわけなのですが・・・。もうお気づきだと思いますが、この作品、実のところ「PROUD」というブランド名で高級マンションを売る野村不動産の広告なのであります。簡単に言えば、「野村不動産でマンション買えば、何だかんだで幸せな人生送れるよ!」というメッセージが刷り込まれているわけです。

以前にあった大成建設のCMといい、新海作品はどうやら重たい企業に好かれているようです。「オタク相手にマンション売ってどないすんねん!」と思いがちですが、私の周囲にいたオタカップルの一人でもPROUDマンションを将来買えば、この試みは大成功なんでしょうね。

  1. そして、本編について

壮大な企業CM*4が終わると、いよいよ「言の葉の庭」本編に入ります。

【一応ネタバレ注意】


本編の詳しい筋は多分、あちこちで語られていると思うので割愛。ここでは賛否が分かれているらしい論点について下衆の勘ぐりをはじめたいと思います。


内容としては、靴職人を目指す高校1年生と、平日なのに公園でビールとチョコを喰らっている美女*5の話。雨の東屋で出会う二人の「孤恋(「こい」と読むらしい)」の物語で、最後は結構すんなりとくっついちゃうような、そうでもないような話になります。


賛否が分かれている論点、それはビールチョコ女*6の処女性というか、純潔性というところ。

劇中の1シーン。実は仕事をやめることが決まっている美女は、自宅でそのことを誰かに電話しています。相手はベランダでタバコをふかす男性。どうやら同僚かつ元彼らしいということは語られるので分かるのですが、もう一つ、ベランダの背後でカーテン越しに映る人影が。要するにこの男は既婚者であり、関係は不倫であったということを暗示しているのです。

そして、主人公の少年はあろうことか、通っていた高校でビール美女に出会うのです。美女の職場は少年の通う学校、つまり女教師であったという事実が判明します。女教師は学校のAグループの女生徒に「アタシの男に色目使ったわね」的なことで言いがかりをつけられていじめにあい、それが原因で職場=学校を辞めてしまうのですが、その事実を聞いた少年は、無謀にもそのA女子のところへ向かうのです。

3年の教室、いかにも不良っぽい感じを漂わせる男女がたむろっていて、そこに問題のA女子が。少年はその女の前に立ち、女教師に対する仕打ちを糾弾するのですが、それに対してA女子の放つ、
「淫乱ババア」
という発言に、少年は思わず女の頬を張ってしまいます。あとは予想通り取り巻きの男にボコボコにされる訳なのですが・・・。


以上の流れにおいて、「女教師が同僚と不倫していた」という事実は必要だったのか?という議論がネットの片隅で起こっているようです。
「元彼の部分は蛇足。新海がネトラレ属性なだけだろ!」

しかし、私にはあのシーンが必要だったのではないかと思うのです。あの設定がないと「純真な少年とメンタルの弱い女教師が恋しました」だけで終わってしまいます。もちろんそれはそれでいいですし、話の表の筋だけでも、それなりにいい作品だったとは思います。

しかし、それでは「秒速5センチメートル」で、世の童貞どもの心をいとも簡単にえぐった伝説を持つ新海先生らしくありません。

どうやら、女教師が同僚と不倫?をしていたという事実までは世間に知られていないようです。ちなみに相手の同僚は体育教師であるという設定らしいです。

当然、同じ学校に若い女教師が勤めていたということすら知らなかった少年がこの事実を知っていたとは思えませんし、教師は実家の四国に帰ってしまうので話はそれでおしまいなのですが、もし、「淫乱ババア」と罵られる位で先輩の女をビンタしてしまう純粋な少年が、この事実を知ることになったら・・・と想像すると、この作品の魅力がぐっと増すのではないかと思います。

以下、完全なる妄想。

少年「雪野先生(女教師の名前、ちなみに苗字)・・・、伊東先生*7と付き合っていたって・・・本当ですか?」
雪野「秋月くん(少年の名前)・・・その話・・・どこから聞いたの?」
秋月「やっぱり・・・本当だったんですね」
雪野「い、いえ・・・違うのよ。伊東先生は、仕事のことで相談に乗ってもらっただけなの、そんな関係じゃ・・・」
秋月「僕の母親が、ある場所で先生たちを見たって言うんですよ。どこだか分かりますか?」
雪野「そ、それは・・・どこかの喫茶店じゃないかしら。ほら、学校でそういう話をする訳にもいかないでしょう?」
秋月「へぇ・・・先生の行く喫茶店って、入るときに何千円もかかって、腕を組みながら個室に入っていくところなんですね」
雪野「そんな・・・何かの間違いじゃないかしら?あなたのお母さんだってそんなところに行かないでしょう?」
秋月「普通の母親ならそうでしょうね。でも、僕の母親も、そこに行っていたんですよ。新しい年下の彼氏とね*8。そこで、先生を見たって、酔っ払いながら言ってましたよ・・・。」
雪野「そ、そう・・・。そ、それは喫茶店とかでも話を聞かれてしまうかもしれないから、もっと誰にも聞かれない場所でって高野先生が言ったから・・・」
秋月「確か、伊東先生って結婚されていましたよね」
雪野「!!・・・そ、そうだったかしら・・・」
秋月「僕、よく分からないですけど、ああいうところは結婚した男性と女性が入るところなんですか?」
雪野「・・・」
秋月「そうですか・・・。それはそうと、僕はあの先輩に謝らないといけないですね」
雪野「先輩・・・?」
秋月「ええ、以前僕が顔に怪我をしていたことがありましたよね。あれ、ケンカしたって言いましたけど、本当は3年の先輩に殴られたんです」
雪野「ええっ!そんな・・・担任の先生には相談した・・・あっ・・・」
秋月「今更先生面ですか?いいんですよ。元は僕が悪いんですから。先生をいじめていたっていう3年の女の先輩が、先生のことを『淫乱ババア』なんて言うから、カッとなってその先輩を平手で叩いてしまったんです。あぁ・・・本当に悪いことをしましたよ」
雪野「秋月くんが・・・そんな・・・」
秋月「悪いことですよね、『本当のこと』を言った人を叩いてしまったんですから」
雪野「・・・」
秋月「

*1:映画泥棒が出る=予告が終わって本編に入るサインになるわけで、タイミングとしては秀逸だなと思ってしまった

*2:空間に電話の相手先が表示される仕組みらしい。これ便利か?スマホが発達しちゃったもんだから、こういう表現でないと未来感が出せないんだろうな・・・

*3:怒り新党の「新・三大○○調査会」風に

*4:嫌味じゃないですよ。やり方は非常に合ってると思います。私がターゲットではないというだけで

*5:美女なら何でも許されるよね

*6:ヤな言い方

*7:体育教師の名前

*8:主人公の母親は離婚していて、若い男とすぐ家出しちゃうというのは本当の設定。ちなみに大学職員らしい。新海先生の頭の中では、硬い職業こそ性に奔放という設定でもあるのでしょうか?